編入学試験後報告書 完結編

はじめに

苫小牧高専からはこだて未来大学に編入し,その様子を苫小牧高専アドベントカレンダーの記事(2017,2018)として投稿してきた.
そして3月8日現在,卒業式まで残り14日ほどとなった今,編入学後の生活の締めくくりとしてここに完結編を記す.
なお,内容に関しては以前のものと重複する部分も多く,総集編に加筆したような内容になっている.

 

受験関係

志望校決め

高専から大学への編入学は,日程が重ならない限りいくらでも受験することができる.私には私立に行けるような経済力はなかったため,国公立を4校受験した.その内訳は偏差値60以上の国立大学を3つ,偏差値45の公立大学を1つである.
4校とは編入学で受験するには比較的多い数だが,当時の私は「あのとき受験しておけば受かってたかもしれない.自分はスペック上はもっと頭が良い.という考えを消しておきたい」とか「数撃ちゃ当たる」とか考えていたように記憶している.しかし4校も受験するのは金銭面,勉強面などから考えて極めて非効率的であった.金銭面に関しては受験料・参考書代・ホテル代・交通費など多額の費用がかかり,勉強面では4校分の出題範囲を勉強する必要があり大変なことになる.
もしもう一度編入学試験を受ける機会があれば,おそらく本命と滑り止めの2校に絞ると思う.
 

受験勉強

受験勉強はあまりせず,現実逃避気味に卒業研究に打ち込んだ.卒業研究とは目標を自分で設定するため無限に楽しめる趣味のようなもので,やらなければいけないのだからと自分に言い訳しつつ現実逃避するには最適だったのである.
教材に関しては図書館のものや,Amazonで購入(一部は中古で安く手に入った)した.
 

受験結果

偏差値45の公立大学にのみ合格し,国立大学3校には不合格となった.勉強不足であり当然の結果で,合格者発表を見る前に結果はわかっていたのだが,ショックなものはやはりショックで,しばらく気落ちしていた.
 

大学生活

入学前

成功率25%という悲惨な受験結果を受け,入学前の時期は現実逃避が加速していたように思える.下宿に関しても下見もせずに安いところに決め,適当に生きていたように思う.
 

入学式

3年次編入学だが,1年生と一緒にオリエンテーションを受けた.なんとなく申し訳無さがあり,居心地が悪かったのを覚えている.
また,入学前には高度ICTコースというコースを志望していたが,単位変換により必修単位(認知心理学・認知心理学演習)が足りなかったため,高度ICTコースではなく情報システムコースに配属されることを,入学から4日後のガイダンスで知らされた.それまで私は先輩や同級生に「ICT行きます!よろしくおねがいします!」みたいなことを言いつつ挨拶をしていたため,とても恥ずかしかったことを覚えている.事務局絶対許さんからな.
ついでに同期のある編入生は時間割上で必修科目が重なっていたため,その時点で留年を言い渡されていた.彼女の件に関しては彼女自身が『高専から大学へ編入学して4日で留年した話』として書いている.

下宿

朝夕食付き,送迎バス(朝2便 夜1便)ありのとある下宿に入った.高専の寮と比較すると広く,自由があるが,騒音がひどかった.向かいに住む大学生がおそらく自閉症で,廊下を走ったり奇声をあげたり,よく騒音問題を発生させていた.下宿には野球部の高校生もおり,暖かくなると下宿に隣接している駐車場で野球をして,これもまたうるさかった.隣の部屋の高校生もボールの壁当てが趣味なようで,このような環境で私はイヤホンや耳栓と共に生活していた.たぶん運が悪かった.
 

友人関係

同じ編入生だと取る講義も被りやすいので仲良くなる.そのうちプロジェクト学習で自然と仲の良い友人ができ,研究室に配属されるとそこの人とも自然と仲良くなる.
 

函館

朝市の二番館とHAKOYAという店で500円の海鮮丼を出しているためおすすめ.また,ラッキーピエロもボリュームを求めるならおすすめ(ただし観光地近くは常に混むため避けるべし).また,ミスタードーナツが安い.
観光関しては函館ベイエリアの散策や,函館山への登山が楽しい.特に函館山は十分に整備されており,周りがほぼ海に囲まれているため遭難の危険性が少なく,高さも極端に高いわけではないが景色もよく,運動にはちょうど良い.五稜郭に住むのであれば五稜郭公園の散歩も楽しい.特に桜の季節の五稜郭はとてもきれい.
 

講義関係

単位認定

単位認定に関しては入学前に成績証明書と単位変換の対応表を提出する.

こんな感じになって,入学式の4日後のガイダンスで帰ってくる.ちなみにそのときにはすでに講義は始まっているので,あらかじめ単位認定の予想を建てて,時間割を決めておかないと間に合わない.
あと,高専4,5年で学んだ高度な内容は未来大の1,2年では対応する科目がないため,編入後に高専で学んだ内容を再び学ぶことが多々出てくる.コンピュータグラフィックス,ネットワーク通信理論,情報ネットワーク,ネットワークセキュリティ,パターン認識がそれに当たる.違う先生から学ぶため面白いと感じることも多いが,ものによってはとても退屈に感じるかもしれない.

必修科目である認知心理学と認知心理学演習はどう頑張っても単位変換できないので,これに関しては2年生と一緒に受講する必要がある.認知心理学演習は情報工学実験の認知心理学版と言えるもので,両眼立体視や重量弁別などに関して実験を行いレポートを作成するというものである.まあグループ実験もレポート執筆も簡単なものだが,割と時間がかかる.
 

時間割

普通の学生は1,2年のうちに教養科目を取り終えているため,その分編入学生は忙しくなる.また,専門科目に関しても普通の学生と比べると少し足りていない.しかし,取れる単位はほぼすべて取る勢いで,かつ集中講義も利用することで3年のみで卒研以外の単位を揃えることができる.
インターンに関しては学内推薦で申し込む場合,その優先度は(A評定の数/単位を取得した科目数)で評価される.編入学生は認定単位しか持たないため優先度は最低で,応募者数が枠を超えた時点ではじかれる.



 

成績

単位認定による単位は評定がNとなる.
履修した科目のうちモデル化と要求開発とパターン認識の2科目がBでそれ以外はAとなった.モデル化と要求開発は発表点不足,パターン認識はテストで計算ミスしたためBとなったと思う.
 

プロジェクト学習

未来大には3年次の開講科目としてシステム情報科学実習,通称プロジェクト学習が存在する.簡単に言うと「グループで行う卒研」であり,複数人でグループをつくりプロジェクトの目標達成を目指す.
私が所属したプロジェクトはFUN-ECMで,その目的は楕円曲線法により桁数の大きい合成数に対する素因数分解の困難性を検証し,それによりRSA暗号の安全性を検証するというものである.要は高速な素因数分解プログラムの作成である.私の代ではプロジェクトメンバーは7人で,途中から理論班とプログラム班に別れて作業を行った.
飲み会は月に1回程度行っていた.私の場合プロジェクトと卒研の担当教員が同じだったため,研究室でも同じペースで飲み会を行っていた.
 

卒業研究

卒業研究では配属前に学生調査書と呼ばれる自己紹介ページを作成し,それをもとに面談を行い配属の可否を学生と教員の間で話し合う.その後配属希望を出し,主に成績順で配属が決定される.
卒研のテーマに関しては自分で教員に対して提案するか,教員から良いテーマを提供してもらうかの2通りとなる.ちなみに,後者の方が教員が興味を持っているためサポートが手厚い(ような気がする).
ゼミは時間割上では週2回,1回は2コマとなっている.私の所属した研究室では毎回学生が進捗状況について報告を行う形でゼミを進行させていた.
 

施設

図書館

大学の方が蔵書数は多く,4年生であれば貸出冊数が10冊となっており便利.しかし高専の図書館は購入リクエストを出し放題で採用確率が高く,小説も蔵書に含まれていたため,個人的には高専の図書館の方が好きだった.

工房

レーザーカッター,3Dプリンタ,基板加工機を無償で使うことができる.材料は自前で用意する必要はあるが,アクリルに関しては端材が置いてあるため,小物程度であればタダで作ることもできる.装置の使い方などに関しても職員さんが丁寧に教えてくれる.工房の設備をつかってみた記事はこちら

ガラス張り

夏は暑く冬は寒い.
日本の四季を身をもって感じることができる.
なお,冬のオープンスペースは寒いが,研究実験室は灼熱なので気をつけてほしい.
 

大学院

関東の国立大学院と第一志望として,未来大を滑り止めとした.未来大はA評定や優の数が2/3を超えていたため推薦が取れたはずだが,なぜか取らなかった.
第一志望に関しては研究室訪問を行い,特別選抜で受験し,面接を受けたら合格をもらった.編入のときと比べてあっさりしていたのでちょっと拍子抜け.