ECDSAの署名検証が1,000回/秒必要な話

署名検証は1,000回/秒必要と言われている.その根拠を探しに論文のReference辿りをした話のメモ.

以下に参照した論文などを以下に示す.
 
(1)Low-Latency ECDSA Signature Verification  -A Road Towards Safer Traffic-
世界的な半導体サプライヤであるNXP Semiconductorsから2014年に発表された.ITSでは秒間1000以上のメッセージを受け取るため,費用対効果とエネルギー効率が良いASICで実装し,1.034kGEで秒間27.000回の署名検証できることを説明している.
Fig1.の想定している状況の図解がとても分かりやすい.ちなみに,six-level urban stack interchangeの画像を見ながら車線が片側3車線で さらに救急車が来る状況を考えると少し気圧される.
 
(2)平成27年度 戦略的イノベーション創造プログラム(自動走行システム):V2X等車外情報の活用にかかるセキュリティ技術の研究・開発プロジェクト
事業内容の1つに『V2X通信における署名検証の簡略化の研究』があり,その目標として実世界の車載システムで想定される1秒間あたりのメッセージ受信数を、欧州の研究事例から1,000メッセージ/秒と仮定することが説明されている.内容としては署名検証の簡略化の話で,想定される攻撃手法なども交えつつ評価と分析をしている.
欧州での研究事例を下に(3)として示す.
 
(3)PRESERVE Deliverable 1.1 Security Requirements of Vehicle Security Architecture
3.1.8 Performance Conclusions and Requirementsでは6Mbpsで200バイト程度のペイロードが最悪の場合2,200パケット,理論的なモデルでは1,000から1,600パケット,シミュレーションでは1,000パケット程度が受信されることを示している.
なお,理論的なモデルについては3.1.4 Theoretical Analysisに記載されている.
 
今回のことから,「署名検証が1秒間に1000回必要」という話はV2X通信を対象としていることがわかった.しかし,将来的にはITSや自動運転に活用する上で,前提となる条件が変化するかどうかも注視していく必要があると感じた.